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東京高等裁判所 昭和42年(行ケ)97号 判決

一 請求の原因事実中、本願発明につき、特許出願から審決の成立に至るまでの特許庁における手続、発明の要旨及び審決の理由に関する事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで右審決の取消事由の有無について判断する。

(一) 本願発明の技術内容

(1) 成立に争いのない甲第三号証(本願特許公報)によれば、本願特許公報の発明の詳細な説明の項の冒頭、すなわち第一頁左欄第五行ないし第六行には「本発明はトランクとして搬送回線を使用する集線装置の開発に係る。」との記載(以下記載(イ)という。なお同記載中「トランク」というのが「中継線」のことであることは当事者間に争いがない。)があり、本願特許公報第三頁左欄末行ないし右欄第三行には本願発明の効果として、「以上の説明で明らかなように搬送回路を用いた集線装置を使用すれば数十粁に及ぶ山間僻地の部落と雖も磁石式交換機をおくよりも極めて安い経費で電話を普及させることが出来且自動交換機とすることが出来る。」との記載(以下記載(ロ)という。)があり、さらに集線装置に係る本願発明の実施例として記載されている三つのいずれも搬送装置を使用していることが認められ、これらの記載によれば、本願発明に係る集線装置は、搬送装置(搬送回線、搬送回路)を用いることを前提としているものと解することができる。また、本願特許公報第一頁左欄第一七行ないし第二三行には「第2図について基本的な説明をすると、1及び2は集線装置の局外装置を示すものにして、1は一個のトランク、2は一トランク群に対する共通制御装置、3は集線装置の局内側の一トランクを示し、接点K1より下の部分は一トランク群に共通する共通制御装置の説明上必要な一部分を示したものである。OLは集線装置の局外装置と局内装置を連絡する一対の線を示したものである。」との記載(以下記載(ハ)という。なお同記載中「トランク」とは「中継線回路(トランク回路)」のことであることは当事者間に争いがない。)があることが認められ、この記載(ハ)及び本願特許公報第2図によれば、本願発明に係る集線装置は、符号1及び符号2で示されているものから成る局外装置と、符号3で示されているものから成る局内装置とに大別され、これら集線装置の局外装置と局内装置を一対の線OLで連絡するものであることが明らかであり、また、本願発明に係る集線装置の局外装置は、トランク(中継線回路)1とトランク(中継線回路)群に対する共通制御装置2とから構成されていることも明らかである。さらに、前掲甲第三号証によれば、本願特許公報第一頁左欄第二三行ないし第二八行には「搬送装置として五通話路が示されCH1(通話路1)からCH5(通話路5)まで……………として示されている。」との記載(以下記載(二)という。)があり、また本願特許公報の第2図を含めすべての図面においては、通話路CH1ないしCH5を含む搬送装置が、局外装置の一部たるトランク(中継線回路)を示す一点鎖線で囲まれた符号1中に、あるいは局内装置たるトランク(中継線回路)及び共通制御装置を示す一点鎖線で囲まれた符号3中に含めて図示されていることが認められる。そして本願特許公報の記載及び図面からは、搬送装置を集線装置の局外装置あるいは局内装置に含めない旨の説明も図示も見出せない。

以上により、本願特許公報の前記記載(イ)ないし(ニ)及び図面から判断すると、本願発明に係る集線装置の局外装置にはその一部として搬送装置を含めているものと解さざるをえない。

(2) そして、成立に争いのない甲第二号証(引用例)によれば、引用例第6図中のOUTLYING DISTR POINTのもとに表示されている装置としては、集線装置の局外(加入者側)装置と搬送装置の局外(加入者側)装置とが個別に示されていることが認められるが、本願発明の集線装置の局外装置には、前述のとおり、その一部として搬送装置が含まれているので、引用例第6図における集線装置の局外装置と搬送装置の局外装置とから成る装置が、本願発明に係る集線装置の局外装置に相当するものと解され、したがつて、審決において、OUTLYING DISTR POINTとして示される範囲の装置が本願発明の「局外装置」に該当するとした認定には誤りがない。

(3) なお、原告は、集線装置と搬送装置とは学術的にも明確に区別され、本願発明に係る集線装置においても、その局外装置とは集線装置のみの局外装置であつて、搬送装置を含まないものである旨主張するが、たとえ、本願出願当時に学術的には集線装置と搬送装置とは別異のものとして取扱われていたとしても、本願明細書においては、このような学術的な取扱いとは異なり、搬送装置を集線装置の局内あるいは局外装置の一部としてそれに含めて記載していることは、先に述べたとおりであり、原告は、そのような認識のもとに本願明細書を作成しているものと解さざるをえないから、原告の主張は採用できない。

(二) 引用例の技術内容及び本願発明の新規性

(1) 前掲甲第二号証によれば、引用例第6図においては、集線装置の局外(加入者側)装置にSUBSCRIBER LINE+1ないし+49が接続されていることが認められ、このSUBSCRIBER LINEは、原告主張のとおり「加入者線」であつて「加入者」そのものではないと解されるが、この「加入者線」にはその端末部において複数か単数かは別として必ず「加入者」が接続されるものであることについては、当事者間に争いがない。そして、このように「加入者線」に必ず「加入者」が接続されていることとなると、「加入者線」には「加入者」が含まれていると解しても何ら差支えがないと考えられる。しかも、本願発明に係る集線装置においては、その発明の要旨から明らかなとおり、局外装置から加入者に対する通話電流の供給及び信号電流の送出を行うことを特徴とするものであり、「加入者」へのこれらの電流の供給あるいは送出は、「加入者線」を介して行われるのは当然のことであるから、本願発明において、これらの電流を「加入者」へ供給あるいは送出することは、「加入者線」に供給あるいは送出することにほかならない。してみれば、審決において、引用例第6図に示されているSUBSCRIBER LINE+1ないし+49が本願発明の「加入者」に該当すると認定したことを誤りとすることはできない。

(2) 前掲甲第二号証によれば、引用例第6図中のPOWER SUPPLYは、OUTLYING DISTR POINTと表示されている範囲に設置されている集線装置の局外(加入者側)装置と搬送装置の局外(加入者側)装置との両方に接続されていることが認められる。また、成立に争いのない乙第三号証の一ないし三(電気通信学会編「新編A形自動交換機回路図」第一四図)によれば、自動式電話交換設備においては、一個の電源を加入者通話用電源及び交換機動作用電源として使用することが本願出願前周知であつたことが認められる。そして、引用例第6図に示されているものは、共電式あるいは自動式電話機を使用する場合には、通話電流の供給は搬送装置の局外装置から行われているものであることは、原告の自認するところである。

してみれば、引用例第6図において、集線装置の局外(加入者側)装置と搬送装置の局外(加入者側)装置とのいずれにも接続されているPOWER SUPPLYが、原告主張のようにこれら動作用の電源であるとしても、他にRING POWER以外の電源が示されていないことからして、POWER SUPPLYのうち少なくとも搬送装置の局外(加入者側)装置に接続された方は、搬送装置の局外(加入者側)装置の動作用とともに通話用としても使用されているものと解するのが相当である。

そうだとすれば、審決において、引用例第6図のPOWER SUPPLYが本願発明の「通話電流の供給」に該当すると認定したことを誤りとすることはできない。

仮りに、原告主張のように、POWER SUPPLYそのものが「通話電流の供給」に該当しないとしても、引用例第6図においては、通話電流の供給は搬送装置の局外(加入者側)装置から行われていることは、先に述べたように、原告の自認するところであり、また本願発明に係る集線装置においては、先に述べたように、搬送装置を含めたものを集線装置の局外装置と称していることが明らかであるから、引用例第6図において通話電流の供給が搬送装置の局外(加入者側)装置から行われているということは、本願発明の表現でいえば、通話電流の供給は局外装置から行われるということになり、通話電流の供給の点に関しては、引用例第6図に示されているものと本願発明とは何ら差異がないこととなる。

(3) 前掲甲第二号証によれば、引用例第6図中のRING POWERは集線装置の局外(加入者側)装置には接続されず、搬送装置の局外(加入者側)装置に接続されているのみであることが認められる。そしてRING POWER自体が「信号電流送出源」そのものであり、信号電流の送出が搬送装置の局外(加入者側)装置から行われていることは原告の自認するところである。

一方、本願発明の集線装置においては、搬送装置をその一部として含めたものを集線装置の局外あるいは局内装置と称していることは先に述べたとおりであり、引用例において信号電流の送出が搬送装置の局外(加入者側)装置から行われていることを、本願発明の表現でいえば、信号電流の送出が集線装置の局外装置から行われるということになり、信号電流の送出の点に関しては、引用例第6図のものと本願発明とは何ら差異がないこととなり、したがつて、審決において、引用例第6図のRING POWERが本願発明の「信号電流の送出」に該当すると認定したことに誤りはない。

(4) 以上述べたところにより、引用例第6図には「局外装置から加入者に対する通話電流の供給及び信号電流の送出を行う集線装置」が記載されているものと解され、審決において、本願発明は引用例に容易に実施できる程度に記載されていると判断した点に誤りはない。

(三) 結論

以上により、審決の判断は正当であつて、審決に原告主張のような違法はない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

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